第一発見者①
2026年 02月 14日
冷たい小雨降る朝
朝食の準備をしていても何か落ち着かない。
どうせ杞憂に終わるだろうと思いつつ
念の為に隣家の前に行ってみる。
門も玄関も閉まっている日常の光景だが
まだ玄関の中の灯りがついている。
門と玄関の間に駐められた車の前を通り過ぎると
車と花壇の狭い隙間に男の人が仰向けに横たわっていた。
しかも下半身は下着のパンツ1枚で
投げ出された剥き出しの両足の白さが禍々しい。
日常の光景の中に突然現れた奇異な光景に出くわし
どうしても現実とは思えない。
驚きと恐怖で心拍数が上がる。
何も冷静に考えることは出来なかったが
次の瞬間には自宅に走り込み迷う事なく119番通報した。
必死で落ち着こうとしながら
隣家の息子と思われる男性が庭で倒れていると告げた。
男性の顔は見ていないのだ。
白い足しか覚えていない。
消防署の人に 取り敢えず救急車を回したが
その男性に息があるかどうかが大事なのでそれを確認し
その男性の母親が在宅かも確認してと言われた。
怖くて無理ですと言ってしまったが
これは私の責任なのかもと腹を決めた。
いつもならすんなり回る門のレバーが動かない。
ガチャガチャしている間に
ここに自分の指紋が付着して犯人の指紋を上書きしたらとか
ミステリー小説ファンの妄想が
こんな非常時に浮かんでくるのは不謹慎な現実逃避なのか。
門を開けて入ると男性から2〜3メートルの場所に靴の片方が転がり
玄関扉の前には花などを支える緑色の支柱と
眼鏡や雨で湿気たタバコ1本が入った何かのケースが落ちてた。
男性の頭の左横にはもう片方の靴 右手の横には箒があった。
慌てているわりには妙に冷静に観察して記憶している。
意を決して男性を覗き込み名前を呼ぼうとして躊躇う。
自分の記憶にある隣家の息子とはかけ離れた容貌を目にし
この人は誰?
隣家の息子は60歳ぐらいのはず。
と言ってもしっかり顔を見たのは10年以上前だ。
不審者だったらパンツ姿なはずが無いとか思った瞬間
半袖Tシャツから伸びる両手がもぞもぞ動いた。
目も開いている。
名前を呼んでみるが返事は無いし目線も合わない。
それでも生きてることにホッとして玄関の呼び鈴を鳴らす。
2、3回鳴らしてやっと母親の返事らしき小さな声がするが
待っても待っても出て来ない。
自宅にとって返して保留中の電話で報告している間に
サイレンの音が聞こえてきた。
by love_dolly
| 2026-02-14 15:33
| 戯言

